屋久島の苔
世界自然遺産にも登録された屋久島の森のすばらしさは、すでに多くの人々の目を引きつけています。
しかし、その森を構成する要素の一つ「こけ」に関しては、ほとんど知られていないのが実情です。日本に産する1800種あまりのうち、実に700種ものコケが、深い森と豊かな雨に育まれてこの島に生育しています。 屋久島はまさに世界有数のコケの宝庫です。 すべてのコケを調べるには顕微鏡などが必要になりますが、普段私たちガイドが森の中でよく目にする屋久島のコケ達をご紹介いたします。
オオミズゴケ
白緑色の柔らかいコケで、乾燥するとさらに白くなる。ミズゴケの仲間は体の中に穴のあいた袋状の細胞を多く持っているため、スポンジのように多量の水(なんとコケの重さの16倍~26倍)を吸い込むことができる。そのため、生えているミズゴケ類を強くつまむと、水がしみだしてくる。
ジャゴケ
幅1~2cmの葉状で、長さ3~15cm、厚くて硬い。
表面にヘビのウロコ状の模様があり、その中央に小さな気孔が一つずつある。
沢沿いの湿った場所に生息しています。
茎は長さ10cmぐらいになり、仮根に覆われています。
白谷雲水峡などで必ず目にする、丸くてふわっとした苔です。
別名イタチノシッポともいわれています。(かわいい)
エゾミズゼニゴケ
沢筋の湿った地面や岩上に生える。 ヤクスギランド~天文の森によく見られる。 葉の表面は平滑でつるつるしていて、ジャゴケやゼニゴケ類のような模様がないので分類しやすいです。
ヤクシマゴケ
明るい道路脇の水の滴る花崗岩質の崖地に生える。
葉は重なり合ってつき、葉の縁に数個のするどい歯がある。
1911年に岡村博士が初めて屋久島から報告した。その後、国内の他の地域では発見されていないが、国外では東南アジアから東アジアにかけて生育しています。
多様性の高い屋久島には、日本の他の地域には存在しないような、東南アジアと同じような環境が存在しているといえます。
フォーリームチゴケ
日当たりの悪い湿った林床、岩上、樹幹基部、倒木などに生える。
ムチゴケの仲間は現在、日本産が16種類あります。
そのうちなんと15種類が屋久島に生息しています。
確認されていない種類はエゾムチゴケだけになります。
小型で白く、縁が裂けないコムチゴケや、ヤマトムチゴケなどなど。。
オオキゴケ
ヤクスギランド~天文の森でよく見られます。
コケとまぎらわしい植物ですが、地衣類になります。
地衣類は菌類の体内に藻類の細胞を取り込み、共生している。
なんか、枯れているみたいですが、こうゆう地衣類です。
日当たりのよい乾いた岩や樹幹に多く生育し、乾燥に強い
キヒシャクゴケ ヒシャクコケ科
屋久島では標高1300m付近の針葉樹林帯でよく見かけます。
特に淀川登山口から淀川小屋までの間で多く生息しています。
うろこ状に重なっているのが特徴的である。
キブリナギコケ アオギヌコケ科
屋久島では標高600m付近の白谷雲水峡や
標高1300m付近の淀川小屋付近で多く生息しています。
細長くとがった枝が特徴的でいくつのも枝別れしている。
花崗岩の岩の上に多く生息している。
タカサゴサガリゴケ ハイヒモコケ科
屋久島では標高800m付近~1300付近の登山道沿いでよく見かけます。
樹の枝から長く垂れ下がって生息していて、まるでコケのカーテンのような苔です。
白谷雲水峡より淀川小屋付近のほうが多く生息しています。
コキジノオコケ クジャクゴケ科
水がしたたる岩の上や樹の枝に生息しています。
標高1300m付近の針葉樹林帯で生息していますが、
個体数は少ないです。
コスギゴケ スギゴケ科
標高600m付近~1500m付近まで広く分布しています。
北海道から九州まで分布しています。
屋久島では白谷雲水峡の登山道沿いの岩の上に多く生息しています。
オオシラガゴケ
茎の長さは5cm以上になり、葉は白緑色で光沢がない。
この仲間は葉の中央部の細胞にだけ葉緑体があり、周辺の細胞には無いため
白く見える。
屋久島にあるコケが約700種もあるので、これからも地道に写真を撮り分類ができましたらみなさまにお届けしていきたいと思います。一人でも多くの方が屋久島のコケの魅力に触れられることを願っています。
撮影・文章 青木高志
参照: 財団法人 屋久島環境文化財団
「屋久島のコケガイド」より